起業のための「ドラッカー6つの発想法」
By: IsaacMao
ピーター・F・ドラッカーは、「マネジメントの父」と呼ばれる、社会洞察で未来予期をする人でした。「断絶の時代」に代表される彼の社会洞察は難解で理解に骨が折れます。
一方で、彼のマネジメント論はビジネスへの利用がしやすく、多くの人が彼の考え方を用いています。特にドラッカー発想法の代表的なものには「5つの質問」や「イノベーションの7つの機会」があり、経営者が好んで使用しています。
しかし、彼の発想法は定式化しすぎていて応用がききません。
とりわけ起業のような場面では、起業家それぞれが発想を応用し、独自の視点を生み出していかなければなりません。そうでなければ、起業家が他者を抜きんでた事業を創り出すことができないからです。
そこで今回、私が19年間ドラッカーを研究した中で、起業を目指す人に役立つと思えるドラッカー発想アプローチを6つ独自に抽出しました。
起業を目指す人は「ドラッカー6つの発想法」を応用し、起業へと進めて頂ければ幸いです。
◆ドラッカー発想法とは
起業を目指す人は、まずは自分がやるべきことを知る必要があります。
それには抽象化と観察が欠かせません。しかし、これはドラッカーが得意とした方法です。私はこれを応用し「ドラッカー発想法」としました。
具体的には次の6つのアプローチから成ります。
1.批判的思考
2.統合思考
3.弁証法思考
4.類推思考
5.原点思考
6.早送りの発想法
それでは、次に説明していきます。
1.批判的思考
起業のアイデアを考えるにはどうすれば良いでしょうか。これは「世の中の常識を疑うアプローチ」を使えば難しくありません。起業は「常識に反したアイデア」が高い付加価値を作り出すことができるためです。
ドラッカーは論文でよく「~は皆間違っている」という表現を使います。これは、常識を疑って皆が気づいてない価値を見つける方法です。これを「批判的思考」又はクリティカルシンキングと呼びます。
批判的思考は常識に「待った」をかけ、本当にそうか確認をするものです。この方法では「裏から考える」「前提にさかのぼる」ということが大事です。
例えば、「日本の企業は復活が必要だ」という世の中の風潮を裏から考えてみましょう。すると「日本の企業は復活が必要ではない」となります。
この上で「なぜ日本の企業は復活が必要ではないと言えるか」と問いを立て、前提に遡って考えてみると「常識に反したアイデア」が浮かんできます。
前提として「日本のGDPは30年以上成長しておらず、IoTによって企業のモノづくりの復活が必要」ということがあるかもしれません。
この場合、「IoTならモノづくりが復活する」ということが重要ですが、本当にそう言えるのでしょうか?
いくら、産業を刷新し、生産性を向上させる可能性のあるIoTといえど、インフラが整った日本においてIoTを普及させるのは容易ではありません。それぞれの企業が独自のシステムを構築しており、IoTを普及しようにも企業が新たに運用するには莫大な費用がかかってしまうためです。
むしろ、「IoTの起業家が世界で戦えるよう、新しいクラウドファンディングを作った方が良い」というような結論になるでしょう。
批判的思考はこのように使います。
2.統合思考
起業にはビジョン設定が重要です。
これには、自分の想いの言語化を行い、「何故そう考えるのか?」と自問自答していくことが必要です。とりわけ、アイデアの発想は当初、視野が狭くなりがちです。
しかし、自ら想いへの問いかけを行うと、上位にある概念に気づき、起業家自身が広い視点で事業に関わることを可能にすることができます。
これを「統合思考」又はインテグレーティブシンキングと言います。
トロント大学元学長 ロジャー・マーティンは、ドラッカーは統合思考を用い、あらゆることに注意しつつ発想をその上位概念にまで考えていたと述べています。
引用:ロジャー・マーティン
例えば音楽好きな人が起業のビジョンを設定する場合を考えてみましょう。
音楽が好き
⇒賑やかな感じになるから
⇒ワイワイするのが好きだから
⇒色々な人と明るい関係を広げたいから
⇒世界を笑顔にしたいから
このようにすれば、「世界を笑顔にしたい」という起業のビジョン設定を容易に行うことができます。
3.弁証法思考
起業では失敗が当たり前です。落ち込まずに失敗を活かし、次に繋げていかなくてはなりません。
しかし、失敗はその多くが「自分がやりたいこと」と「相手がしてほしいこと」がミスマッチしているときに起きます。この相矛盾した概念を満たすには、片方を捨てるのではなく「両立する」というアプローチが必要です。
この発想法を「弁証法思考」と言います。
「弁証法思考」は自分の発想と相対する発想を超越する所に答えを見出すものです。
統合思考と併用し、図の左下「正」から右上「合」に向かっていくイメージで考えます。
それぞれ、以下のような意味があります。
・発想にそのものを「正」
・発想に反対するものを「反」
・両立するものを「合」
ドラッカーはこれを無限回繰り返し、洗練した発想にしています。
起業においては、弁証法思考は本質的価値に気づく上で必要な方法です。反対する発想を脇に置かずにしっかりと受け入れながら考えていくことが重要です。
4.類推思考
起業はやってから検証すると非効率です。
数千万円も投資が必要な場合や、参入しようとする領域に市場があるかは事前に確認しなければなりません。実行したときに失敗のリスクを減らす上で重要となるためです。
そこで似た事業を設定してシミュレーションをします。これが類推思考です。
例えば、トラッキングシューズの特注店をしたいとき、既に存在している革靴の特注店を調べれば、事業の実現性はおおよその確立で判断することができます。
類推思考のコツは「ザックリと」がコツです。厳密なデータ比較より、起業家自身の「直観」で判断することが大事です。
また、類推思考はドラッカーが頻繁に使用する方法でもあります。統合思考で抽象化し、数世紀前の社会と類推します。この上で彼は社会の行方を構想しているのです。
5.原点思考
この思考は、斬新なアイデアを出したいときに使用します。
「そもそも…はどういうことか」と考え、物事の本質に迫ることでアイデアをゼロベースで発想することができます。
特に批判的思考と併せて使います。
例えばドリルの本質的価値は「穴」です。これはどういうことでしょうか?
顧客がドリルを使うのは、「壁に釘を刺したい」とか「工作部品を取り付けたい」といったときです。この際、ドリルは物を取り付ける穴あけに使用します。
言い換えると、「そもそも、顧客は穴が欲しいのであってドリル本体は要りません」
ということは、「穴だけ売るビジネス」があっても良いはずですね。
社会論の場合、ドラッカーは他者の考えを引用するときは必ず原典にあたります。
彼は「国家」は16世紀の経済学者ジャン・ボダン、「社会」はマックス・ウェーバーなどを調べ、数世紀前と現代の違いを比較しています。
6.早送りの発想法
10年先を予見し、ピタリと当てる。皆が「これがドラッカーだ」と思うのがこの「早送りの発想法」です。起業においては、「今が参入時期か?」と確認する上で重要な発想です。
早送りの発想法は、一見特異に見えますが、実は何てことはありません。
皆普通にやってる発想です。
例えば、ボールを投げたら何秒で壁に当たるかわかりますよね。これと同じです。
具体的には次のやり方です。
・構造の抽象化
・社会的力学の方向性抽出
・対象の未来の姿をイメージ
①ガラケーの画面見にくい
②画面は重要。じゃあ画面を大きく!
③あっスマホだ!
となります。
しかし、ここで大事なことは、「何を重要な価値とするか」です。ここが誤っていると、せっかくの洞察も生かされることはありません。
時代の趨勢や顧客の動きなど、様々な観察をしていくことが重要です。
◆ドラッカー思考は世界観を変える!
世の中のあらゆる問題には、本来「絶対」というものなど存在しません。皆がそれぞれの視点で見ているものだからです。
現に物理学の法則ですら、ニュートンからアインシュタイン、そしてホーキングなど、重心となる視点がどんどん変化しています。
世の中の現象は「観察者の見方」次第でどうにでも変わるものです。
起業家は、世の中の有象無象に囚われず、独自の視点で発想していくことが必要です。起業を目指されている方は、ドラッカー思考をマスターして想いを実現しましょう。
【追伸】
1月10日にドラッカーの分身、上田惇生氏が逝去されました。享年80歳でした。
今回のテーマは、氏の追悼の意を込めて皆さんへ提供することに致しました。
私と上田氏との出会いは、ドラッカーが亡くなった翌年の2006年です。
ドラッカー学会に入会したときにお会いしたのが上田氏であり、私は「先生」と呼んでいました。
氏はドラッカーのことなら隅から隅まで知っている、まさに「ドラッカー辞典」と呼ぶのにふさわしい方でした。できれば、今回のテーマは上田氏が生きている間に、公表したかったのですが誠に残念です。
代わりに皆さんに公表し、社会の発展に寄与したいと思っております。
尚、ドラッカー発想法は筆者が開発したものです。このため文責は筆者にあります。
問い合わせなどありましたら、筆者にまでお願い致します。
サラリーマン転身術「起業家精神 3つの原則」
サラリーマンから起業を志す人は、「何から進めればよいのかわからない」と言います。実際、筆者もそうでした。これに対し、巷では起業を持てはやし、起業を焚き付けようとします。
しかし、筆者はこの動きに「待った!」と述べます。
まずは起業家精神とは一体なにか、起業の目的をどう定めるべきかをそれそれが意識すべきと思います。
今日は、起業家精神を身に着ける「3つの原則」について述べたいと思います。
起業はファッションではない
起業を志すの50分の1の人以外は、アイデアを考えるが行動をしません。このような人たちは、大抵起業の勉強会に行ったり、コミュニティに参加したりと勉強熱心です。
ところが、彼らのほとんどは起業で「お金儲けしたい」「有名になりたい」などと自分本位な動機を持ちがちです。
これに対し、株式会社ウェイビー 伊藤氏は、「自分本位に考えてる人は成功できない」と述べます。とりわけ、本質的動機に「起業した自分がかっこいい」とファッションのように起業を捉えている人は、社会に価値を提供する意識が低いと指摘しています。
とは言え、起業当初は誰でも「そんな感じ」です。あまり堅苦しく考えてると前に進むことができません。
筆者は、まずは自分らしくあるために一歩行動を踏み出し、そして進む中でしっかりと目的を見つけていくことが大事だと考えます。
起業のための「3つの原則」
では起業の動機はどのように定めていけば良いのでしょうか?実際、起業家は「死生観」を重視しているようです。
パナソニック株式会社を創業した松下幸之助は、20歳の時に結核になっています。この頃に感じた死への意識が彼を起業に向かわせました。
引用:パナソニック株式会社
また、ウェイビー 伊藤氏は、23歳のときに出来た大腸の腫瘍による、死の覚悟が起業のきっかけとなったと述べています。
勿論、多くの人にとってこの「死生観」を持つと言う事はそう多くあることではありません。しかし、起業の目的を定めるに置いては、人が必ず経験する「生と死」について、目をそらさずに深く思いを馳せることが不可欠です。
死生観は、ソフィアバンク代表 田坂氏が次の3つを本気で見つめるとわかってくると述べています。
①人は、必ず死ぬ
②人生は、一度しかない
③人は、いつ死ぬか分からない
かなり厳しい考え方ですが、これらの誰も否定できない真実を直視することで、自ずと起業の目的は定まってきます。
リーダーシップと大義
起業の目的を具体化していくには、自らの人生において当事者意識を持っていくことが不可欠です。
ヴィクトール・E・フランクルが「生きることがわたしたちからなにを期待しているのかが問題なのだ」と述べるように、今やっていることがどこかで実を結ぶと信じていくことが起業には必要です。
言い換えると、これはリーダーシップの基本となる考え方です。そして、このような意識に立つことで、「世の中を変え、自分なりに役に立つことをしたい」という立場に立つこともできるのです。
しかし、もし起業において「今すぐやりたい」と言う思いがあるならば、それを大切にするべきです。
成功や失敗を左右するのはお金でも社会的認知ではなく、自分の納得感によるからです。勇気を出して行動をしてみましょう。
起業の問題は客、金、人! パフォーマンス維持で乗り越えろ
出典:youtube @Base Jump XTreme
崖に落ちるまでに飛行機を組み立て、飛べ!
起業は時間との戦いです。
LinkedIn創業者 リード・ホフマンは「起業とは崖から飛び降りて、落ちるまでに飛行機を組み立てるようなものだ」と述べています。
なぜなら、多くは勢いよく会社を飛び出したものの、最初の3年間全く稼げないまま時を迎えてしまうためです。
このため、多くの起業家はスタートしたときから破綻に向かうことになります。
・資金が減り気が付いたら貯金が底をつく
・「餓死するかも」という恐怖の日々
・日雇い労働で精一杯。電気代払えない
従って、起業家は資金が無くなるまでに稼げるようにすることが、まず乗り越えるべきポイントであると言えるでしょう。
乗り越えるには「客」「金」「人」に注意せよ
10年生き残る企業とは?で紹介したように、実際、起業家は1割しか生き残れません。
起業が失敗する要因は主に次のようなものがあります。
1.客の問題:誰もほしがらないものを作った
2.金の問題:資金が尽きて続けられなくなった
3.人の問題:仲間割れで辞めることになった
このうち、1.が最も重要です。
良くありがちなのは、「自分達がこうしたい」という想いが強すぎて誰も欲しがらないものを作ってしまうことです。特に技術系スタートアップに起きがちです。
このためには、まず顧客とその課題を明確にしなければなりません。
この対策は何度も紹介していますが、「切実な課題を持つ人を見つけ、それを解決する手段として商品開発をすること」が重要です。
具体的な方法は次を参照してください
次に、2.の間違いとして、多くの人が資金調達を投入してから製品開発をしがちということです。
稼げる前から借入金を得るようなことをすれば、仕事の中心が顧客から「お金」になってしまいます。このようなことをすれば、顧客を得ることはできなくなります。
その上、生活していくためには、売上でなく「利益」を獲得しなければなりません。
これには、次の利益方程式において「客単価を上げる」「客数増やす」「コストを減らす」のいずれかが必要です。
利益=客単価×客数-コスト
この「客単価」と「客数」はトレードオフの関係にあります。客単価を増やせば客数が減り、逆に客単価を減らせば客数が増えるからです。
そして「コスト」は原価と顧客獲得コストに分けられます。
資産のない起業家は、「極力物を作らない」など極限まで原価を抑え、広告費も少なめにして顧客獲得への活動をしなければなりません。
このように起業家は、客単価と客数の関係を適切に設定し、コストを極限まで抑えていかなければなりません。
また、3.は人間関係が失敗の原因のケースです。
起業をスタートするのに最適な人数は3人ですが、絶対ではありません。なぜなら、育ちも考え方も違う者が集まるとトラブルの原因にもなりやすいためです。
このため、仲間選びには慎重になった方が良いでしょう。例えば、3ヶ月お試し期間として一緒に仕事をし、その上で互いにやっていけそうか判断するなどした方がよいでしょう。
それでも問題は起こる! パフォーマンスを維持が大事だ
「客」「金」「人」はどれだけ注意しても失敗は起こります。
実際、筆者も客と人で失敗しています。
しかし一方で、成功してもさらなる高みを追い、無理をしすぎてメンタルを壊したり、生活習慣病になってしまうこともあります。
このため起業家は、失敗、成功の両方でメンタルをコントロールし、フィジカルも管理していくことが必要です。
①失敗から学ぶ
うまくいかない起業家は、失敗を「環境のせい」や「政府のせい」などと自分以外の要因にしがちです。これでは、失敗したとき自らを省みず、成長することができません。
失敗したならば、まず自分を省み、変化し続ける意思をもって行動していかなければなりません。
②成功レベルをコントロールする
事業が上手くいき、短期間で上場ができても安心はできません。
起業家は「成長が止まると潰れてしまう」危機感から休むことができず、自分をつぶしてしまうことがあります。
このため、自分自身を常に振り返り、「無理しすぎているな」と感じたらすぐに仕事を切り上げることが大切です。
③フィジカルを維持する
起業家の多くは40代です。このため、肉体の衰えが起きて疲れやすくなる人も多くなります。定期的に運動して体調を維持することが重要です。
パフォーマンス維持には習慣化が不可欠! 記録ツールを利用しよう
起業家が仕事で潰れるのはもったいないことです。このため、習慣的にチェックし、常に改善に努めていかなければなりません。ところが、いざこれをやっていこうにも続けていくには大変です。
このため、途中で挫折せずにしていくには、「記録ツール」を利用した方が良いでしょう。毎日の自分の記録をチェックすることで過去の自分からの成長を実感でき、モチベーションが高まります。
記録が面倒なら自動記録ツール もありますので、積極的に利用していきましょう。
起業家は長く健康で生きられるよう、パフォーマンス維持に気を払っていくことが何よりも大事なのです。
変わる経済システム 巨大デジタル市場が社会に変革を起こす ≪第4回≫
第3回までは、仮想通貨は消滅する一方で、国際経済の欠点を埋める可能性もあることを論じてきました。
今回、第4回では仮想通貨の生みの親「サトシ・ナカモト」の間違いを指摘し、仮想通貨を経済的に機能させる方法について論じたいと思います。
仮想通貨金融システムの必要性
仮想通貨の発案者サトシ・ナカモトは、今日の経済システムが政治権力と結びつきつつも、脆弱であることに気づいていました。そこで彼は、世界金融危機のときにイギリス政府の行動を批判するように、初期のビットコインのブロックチェーンを作り上げました。
これによってサトシ・ナカモトは仮想通貨を経済学で言う信用創造を不要とするシステムにしました。
しかし、これは正しくもあり、間違ってもいます。
第一に仮想通貨がコンピュータの取引情報のみで正当性を保証されるということは、通貨と信用を政治権力ではなく市場に任せるということです。
市場おいては社会的な位置付けと役割によって活動が意義を持ちます。このことは、社会においては信用を必要とすることを意味します。
つまり、信用創造を不要とすることはできません。
第二に市場には、市場としての権力、規制や権威が存在します。これは政治権力とは異なるものです。
従ってサトシ・ナカモトが述べる通り、通貨は政治権力から外さなければなりません。しかし、このことは同時に通貨は市場において権力による統治が必要となります。
言い換えると規制への反対ではなく、むしろ規制を必要とします。
つまり、仮想通貨は信用創造の権力を政府に依存せず、市場としての統治が必要です。
さもなければ、今日の仮想通貨は政治権力が市場において正当たりえないことを証明しただけにすぎません。
ということは、仮想通貨は基本システムの修正が必要になります。
しかも今日、仮想通貨のための金融システムを設立しようという動きがないことが、仮想通貨の信用を取引所の経営能力のみの保証とし、脆弱にしています。
仮想通貨は純経済的な専門家集団の手に渡し、取引所をその機関の監督下に置かなければなりません。しかもそれは通貨を政治権力から外して世界全体のために意思決定を行う機関でなければなりません。
そのような機関によって仮想通貨は、はじめて国際通貨金融システムとして実現が可能になります。
実は私たちは既にそのような機関を手にしています。
1946年に設立され、国際的な専務理事に恵まれてきた権威ある機関、IMF(国際通貨基金)です。IMFが取引所を監督し、取引を規定することが仮想通貨の信用創造を可能にします。
その上、IMFが発行している通貨SDRが、取引所の外資準備通貨となります。
今日ドル基軸制において各国が用いていることと同様、取引所が仮想通貨の流動性危機の防止としてSDRを保有します。
そしてこのことが仮想通貨の尺度を設定することになります。もちろん、これを可能にするにはIMF加盟国の協調とSDR発行枠の拡大がなければなりません。
しかしこのことは、今日のドル基軸制における金融機関は変革が必要であると言えます。
特に銀行においては今日の預金システムが機能しなくなります。これによって銀行は別の道を探るか、仮想通貨の取引所となるか選ばなければなりません。さもなければ、銀行は生き残ることができなくなります。
しかもさらに重要なこととして、IMFの仮想通貨への介入はアメリカには耐え難い苦痛になります。
アメリカが基軸ドル制の維持に失敗したとき、世界が仮想通貨による国際通貨金融システムに変更する危険性があります。そのため、アメリカの抵抗が仮想通貨の金融システム、つまり国際通貨金融システムの実現を遅らせるでしょう。
従って、今日の仮想通貨はグローバル経済の通貨金融システムの補完であって代替ではありません。デジタル上にのみ存在し、機能する通貨金融システムです。
実体通貨のグローバル経済と併存して存在するデジタル経済としての通貨です。
しかも、仮想通貨はその基幹機能のブロックチェーンにおいて知識そのものの市場を実現することになります。
しかし経済においてこれを可能にさせるには、時間がかかるはずです。
かつてのアメリカは、今の経済システムを実現するまでに1世紀もの期間を要しました。
「ドックイヤー」と言われた21世紀の現代でさえ、国際政治の複雑さから経済的なあり方を変えるのは容易ではありません。このため、私たちはまず可能なものから実現していく必要があります。
次回は、今後の経済のゆくえについて論じたいと思います。
やり抜く力が必要だ‼︎ 成功する起業「5つのステップ」
Startup Scienceの著者 田所氏は、起業の失敗は70%以上が「事業拡張の急ぎすぎ」によるものと述べていますす。起業家は、顧客の求めるものをよく知らないまま商品を作り、販売してしまうことが主な原因のようです。
このため、起業家は成功する上で必要な考え方をおさえることが必要になります。
そこで今日は、Startup Scienceを抜粋し、「成功する起業 5つのステップ」として紹介します。
◆成功する起業 5つのステップ
ステップ1 アイデアを検証する(Idea Verification)
Zero to Oneの著者 ピーター・ティールによると、事業のアイデアは「賛成する人がほとんどいない、大切な真実」が重要と述べています。
これは、一般の人からは「狂ったアイデア」に見えるものです。このため、他社は起業家を甘く見て攻めようとしません。
しかし、こうなるとしめたものです。起業家は悠々と起業準備をすることができるためです。
狂ったアイデアは、少数の人が強く望む「切実な悩み」に焦点を合わせることが大事です。その上で、原体験に沿ったものか検証する必要があります。
詳しくはこちらを参照してください
まずは顧客を作れ!「起業をはじめる5つのアプローチ」
ステップ2 顧客の問題を明らかにする(Customer Problem Fit)
起業家の考えたことが、本当に顧客の潜在意識にあるのか検証します。
何故なら、はじめは顧客についての情報がなく、ほとんどが的外れになるためです。
この段階は実際にビジネスが前に進んでいるのか目に見えにくく、検証も大変であるためにおろそかにされがちです。
しかし、ここをいい加減にすると顧客の望まないものを作ってしまいます。時間をかけて検証しましょう。
コツとしては、「顧客から直接聞く」「クレームを聞く」などが有効です。
ステップ3 顧客課題と解決策の一致を図る(Problem Solution Fit)
把握した顧客イメージを元に、どんな解決策なら顧客課題を解決できるか検証します。
顧客課題を把握しても、自分達の解決策が顧客にとって、本当に価値あるものになっているとは限りません。
このため、優先度の高い課題から実験的な検証を行い、「顧客課題」と「自分達の解決策」のマッチングをすることが必要になります。
ここでは、何度も試作品を作って顧客に試してもらい、解決策を磨き上げることが大切です。
この段階に来ると事業転換が頻繁になってきます。事業転換をしても継続できるよう、行動しながらビジョンを磨きあげていくことが必要になります。
この段階のコツは、「ブログのアクセス分析を使う」「紙で簡易的な試作を作って反応を確かめる」などが有効です。
ステップ4 製品と市場の一致を図る(Product Market Fit)
ここでようやく、本格的な試作検証が必要になります。
ただし、ここでも必要最低限の機能の製品(MVP: Minimum Viable Product)による検証です。
多くの起業家は、人やお金が限りなく少ない状態です。このような状況において、製品を完全に作り込むのは効率的とは言えません。
したがって、顧客課題の検証をする上で最も重要な機能から進めることが必要になります。
とにかくシンプルに、そして1つの解決策について最適化された製品を作ることが必要です。その上で、作業のボトルネックを分析しながら効率よく進めなければなりません。
ステップ5 事業拡大を図る(Transion to Scale)
ここでいよいよ、資金調達です。しかし、注意しなければならないのは、「最初はできるだけ自己資金を使い、本当に拡大が必要になったときに資金調達をする」ということです。
なぜなら、資金調達は創業期の起業家の集中力を奪うからです。特にエンジェル投資家やベンチャーキャピタルとの交渉に3ヶ月以上もの期間を要するからです。
投資家には自分たちの事業が魅力的に映るように工夫した資料を作ることが大事です。
◆仮説と検証を繰り返し、やり抜け!
起業の初期では、資金調達して製品をつくり、顧客を開発し、仲間を集める、など多様な活動が必要になります。
しかし、最も重要なことは、仮説と検証を繰り返して製品の質を高めることです。
そこで起業家に求められるのは「やり抜く力」です。
田所氏の『起業の科学』では、スタートアップの成長プロセスを「アイデア検証」から「事業の拡大」までの20ステップに分解し、具体的に解説しています。
さらに詳しく学びたい方は、Startup Science 田所氏主催の動画プログラムに参加することをお勧めします。
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≪Startup Science動画プログラム≫
「enfacスタートアップサイエンス」
2550ページのスライドがあります。起業のための知識が満載ですのでおススメです。
知っておくべし! 起業家と家族の「メンタル不調対策」
メンタル不調は起業家だけではなく、家族もなってしまうこともあります。
こうなると、多くの人は家族や自分がメンタル不調になるとパニックに陥ってしまいます。
こういったとき、起業家は家族としてどう接すればいいのでしょうか?
以前、メンタル不調の家族会役員を5年間勤めた私の経験から述べたいと思います。
◆不安の伝播と家族
メンタルケアの大前提として、家族を支える起業家がまず健康でなければなりません。
家族がメンタル不調になると、不安は伝播します。
どのように接すればいいかわからず、途方に暮れ、自分自身が疲弊してしまうためです。
起業家が家族として、本人のうつの状態を評価し、緊急性の有無や医療機関、専門機関などにかかるタイミングを見極めることが大事です。
医療法人永朋会理事長 精神科医の加藤晃司医師は、「メンタル不調を抜け出す対策は、本人だけで進めることは困難」と述べています。
このため、自分独自でメンタル不調の判断を決してするべきではありません。
しかし、男性はプライドが高く、誰にも相談せずに夫や兄弟が自分自身で抱えることが多くあります。このため、男性のうつは深刻化しやすく、自殺にいたることが多いのが実情です。
一方で女性は、普段から友人と情報交換しているため対策がしやすく、医療機関や専門機関にかかる方が比較的多くいます。
私自身、これまで実際に多くのメンタル不調の方やその家族とお会いしてきましたが、専門機関に相談来る方は概ね以下のようになっていました。
①子供がメンタル不調で親が相談:95%
②姉妹がメンタル不調で姉が相談:3%
③奥さんがメンタル不調で夫が相談:2%
家族会であるためか、相談に来られる大多数が、子供がうつ病や統合視聴症になるケースです。しかし、ご自身で来るときを除き、家族の紹介で男性が専門機関に来る人はゼロでした。
実際、夫がメンタル不調になると、多くの奥さんにとっては結婚したパートナーとは言え、「他人」という意識が働くようです。
残酷なようですが、メンタル不調は本人任せにする方が非常に多いのです。
◆メンタル不調の家族にはどう言葉をかけるべきか
よく、うつ病の人に「頑張って」と言ってはならないと言われています。
辛い中で本人にさらなるプレッシャーをかけると自分を支えられず、自殺に向かってしまうためと言われています。しかし、実はこれは正確とは言えません。
大事な事は何より本人が安心できる接し方をすることです。たとえ「頑張って」と言わなくても、本人が安心できる状況にない限り、より悪化してしまうためです。
本人が"命令"と受け取るような言い方ではなく、"声援"として「頑張って」と声掛けをした方が良いのです。
家族としては、普段から本人の性格に配慮して、「励ますべき」か「そっとしておくべき」か判断することが大事です。
◆こうなったら危険! メンタル不調のケース
メンタル不調は、実際になってみないとその恐ろしさはわかりません。しかし、いざとなると多くの人がどうすれば良いかわからず、困ってしまいます。
従って、事前にメンタル不調の例について学んでおくことが大切です。
ここで、次に私が実際にお会いした3つのケースを紹介します。
①奥さんがうつ!?「石になりたい」
夫とと子供の3人暮らしの40代の女性は、お子さんが生まれてからうつ病を発症していました。うつ病は1日で辛いときと軽いときがあります。
しかし、その女性は夜になると苦しくなり、呼吸すら辛くなると言います。ときには全く動けなくなり、彼女はその辛さを逃れるために「石になりたい」と感じるほどでした。
②引きこもりの息子を持つ父親
また、60代の父親は30代の息子に困っていました。大学を卒業したものの、働かずに一人暮らしでずっと引きこもりになっていました。
連絡を取ろうにも一切連絡取れず、なけなしの金を叩いて仕送りする毎日でした。
しかしその後、彼は根気よく息子に接し、何とか連絡を取ることができています。
③自分がそううつ病
自殺未遂をした60代の男性もいます。
躁鬱病を持っているその方は、気分が不安定であり、落ち込んでいるときは話しかけるだけで怒り出すほどでした。
しかし、最悪の時は体が全く身体が動かず、じっとせざるを得ません。
ところが最悪期から脱すると、辛さから逃れるために自殺をしようとしたのです。もっとも、その時期は身体が思うように動かず、力も入らないために自殺を断念したそうですが‥
◆普段から知っておこうメンタル不調の専門機関
不調を感じたら、まずはメンタルクリニックにかかる必要があります。
一方で、メンタル不調になると「社会の落伍者」という感覚が否応なしにのしかかってきます。仕事ができず、生活もまともに送れずにいる自分を責め、自信を喪失してしまうためです。
このため、次の場に家族が通うよう薦めてみることをお勧めします。これらのグループに通い、自分なりのやり方を見つけることで徐々に良くなることができます。
実際、筆者もパニック障害から回復することができています。
①カウンセリング
②セルフヘルプグループ
③ヨガやヒーリング
メンタル不調は、自分自身は基より家族ですら解決することは困難です。自分達だけで解決しようとせず、医療機関や専門家を頼ることが大切です。
普段からこれらを意識することで、「もしものとき」の対策と予防を続けていくことができるのです。
起業で稼ぐには? 失敗しない「2つのコツ」
全然稼げない。
このままだと破産だ…
明日からどうやって食べていこう…
希望を胸に脱サラしたものの、お金がなくなって悩む起業家は多くいます。そしてお金がなくなって消費者金融に駆け込み、すぐに底をつきる。借りては無くなりでどんどん苦しくなっていきます。
一方で手軽に始められるネットビジネスに手を出しても、アフィリエイト収入がほとんど得られない人も多くいます。実際、NPOアフィリエイトマーケティング協会によると、7割の人のアフィリエイト収入が1万円以下という報告がされています。
これでは食費もままなりません。まずは、生活資金を稼いでいくことが大事です。
それでは、どうやって稼いでいくべきか、今回は起業で稼ぐための2つのコツを紹介します。
誤解されている「稼ぐ意味」
あまり知られていませんが、起業で「稼ぐこと」は3つのパターンに分かれます。
①お金持ちになるため
②生活の糧として
③事業を大きくするため
多くの人は①と③を一緒にしていますが、実際は全て「異なるもの」です。
①は大多数の人にとっては、貯金が増えたり持ち家を持ったりする「資産価値の増大」を意味します。
しかし、起業は資産価値の増大を行うことではありません。もし、この動機で起業を進めていならば、稼ぐ意味を「間違って理解」しています。一度手を止め、振り返ってみるべきです。
そのような人は今は起業をすべきではないからです。
では、②と③はどうでしょうか?
②は当面の食費を得るための「生活資金」であり、③は進めている事業を大きくする「投資の拡大」を意味します。
つまり、①〜③の動機で「内なるもの」からのものであれば、起業を実現していくだけの可能性があると言えます。
しかし、一方で起業家の大半は赤字を抱えています。起業でやりたいことを見つけるフレームワークで紹介しましたが、多くは3年間赤字です。
実際、私の知り合いの起業家は、事業が立ち上がるまでコンサルタントとして生活資金を稼いでいました。
このため、起業家はまず、生活資金を得て「最初の3年間の赤字をどう乗り切るか」を考える必要があります。その上で投資の拡大として「どう事業を軌道に乗せていくか」を検討していくことが必要です。
顧客をつくれ!そして目立て!
では、最初の3年間の赤字をどう乗り切ればよいのでしょうか?
それには、まずは顧客をつくることが大事です。まずは顧客をつくれ!「起業をはじめる5つのアプローチ」で説明しましたが、最初は「顧客の切実な悩み」を掴むことが最優先です。
顧客をつくるには、自分が行おうとしているサービスが必要と思ってもらうことが必要だからです。
そして、「自分を皆に見つけてもらい、知ってもらう」活動を行うべきです。
なぜなら皆、立ち上げようとしている起業には関心がありません。このため、「相手が必要だ」と思ってもらう活動が必要となります。
これには、SNSでの役立つ情報発信や、コンサルタント活動、目立つ広告の掲示といったことを行わなければなりません。
広告の方法は七転八起!? 起業家カーネルおじさん を参照してみてください
しかし、ここで重要なポイントがあります。
それは「相手から共感を得ること」です。
感謝し、相手から学ぶ姿勢が大事です。そうやって少しずつ信頼を積み上げて「あなたからでないとならない」と思われるような立場になることで、はじめて商売ができる素地が生まれるのです。
稼ぐための2つのコツ「請負分散」と「仕入商品」
3年の赤字の間に食べていくには、当面の生活資金を得る仕事が必要になってきます。Y-コンビネータ創業者 ポール・グラハムはこの生活資金を「ラーメン代」と呼んでいます。
このラーメン代、稼ぐのに効率的な方法はアフィリエイトではありません。実は「請負の仕事」なのです。アフィリエイトの何倍も稼ぐことが可能です。
①生活費を稼ぐ「請負分散」
請負は、はじめにクラウドソーシングで仕事を得て、徐々に直接顧客から請負うように移行していようにした方がよいでしょう。クラウドソーシングからの受注のままでは、中間業者から手数料が取られ、起業家が受け取れる代金がほとんど残らないためです。
この上でさらに元請を増やし、複数の会社から請負う「請負分散」を行うべきです。請負の仕事には、繁忙期と閑散期があります。仮に1つのままだと閑散期のときに仕事がもらえないことがあるためです。
そうなったらすぐに困窮してしまいます。このため、請負分散で乗り切ることが大切なのです。
しかし、請負の仕事は誰でもできるわけではありません。
請負はある程度の専門スキルが必要となるためです。もし、そのようなスキルがなく、食べていくにも困難であればサラリーマンに戻り、「パラレルキャリア」として起業を進めた方がよいでしょう。
そうやって生活費を稼ぎながら、「仕入商品」を利用して主事業の立ち上げを行っていかなければなりません。
②事業立ち上げを加速する「仕入商品」
多くの起業家はいきなり自前の商品を作りがちです。これでは稼げる前に多額の資金が必要となってしまいます。実はこれが破産の大きな原因となりうるのです。
このため、まずは商品を作るのではなく、他社から「仕入れる」ようにすべきです。「商品の仕入れ」ならば、すぐに稼いでいくことができるからです。
ここでは参考としてブログで販売する方法を紹介します。アマゾンや楽天の商品を販売するのがおススメです。
社会的な成功より「人生の成功」を目指せ
多くの人は稼ぐ動機を「良い暮らしをしたい」と考えがちです。
しかし、これは起業においては間違っています。なぜなら、この「良い」というのは、他者を基準にした動機であり、言わば「社会的成功」にあたります。
動機を他者基準にする人は、途中で挫折するか、詐欺業者に騙されがちです。「Webサイトクリックだけで1億円稼げます」という甘い言葉に乗せられてしまうのです。
自分の内なる動機で進めなければなりません。
なぜなら、起業において最も重要なことは、自分が昨日より成長することだからです。
「今の自分はきちんと他者の役に立っているか」と振り返り、自分を成長させながら前に進むことが大事です。
つまり、起業家は「人生の成功」を目指すことが大切なのです。
稼ぐ力が必要だ!起業への「再起動」のススメ
階層化する社会
1929年の世界恐慌では「持てる国」と「持たざる国」に分かれ、植民地や資源といった「物量」が国家の優劣を決めていました。
ところが21世紀の現代では、競争の場が国家から個人に変わりました。これにより、「持てる者」と「持たざる者」という"個人の優劣"に分かれるようになりました。
しかも、優劣を決定づけるものも変わりました。かつての「物量」から「知識」になりました。他者より抜きんでた知識を持つ者が、教育機会や就業機会により恵まれるようになり、世界は階層化するようになっています。
橋本健二氏によると日本は、給与所得ごとに5階層に分かれており、その内「持てる者」である経営層が就業人口全体の僅か4.1%しかいないと述べています。
しかも、この持てる者は投資資産によってさらに資産を大きくし、その利回りを通じてよりよい機会を得ることができています。しかし一方で、その下の「管理職」「正規労働者」「非正規労働者」らは乏しい資産のために、教育機会や就業機会が得られない者もいるといった状況にあります。
しかし、日本ではインドのカースト制と異なり、経営層以外は努力次第で上位層へ移行することも可能です。このような社会構造は、橋本健二氏の「階級」というより「階層」とする方が適切と言えるでしょう。
また、厚生労働省の平成22年国民生活基礎調査によると貧困率が年々増加しており、子供がいる大人1人の世帯の貧困率が50.8%もあると報告されています。このため、日本の社会は決して楽観できない状況にあります。
稼ぐ力が必要だ
ところが、日本ではこれらの格差の原因を「自己責任」と処理し、ほとんどが真剣に向き合っていません。確かに努力次第で上位層へ移行できるとは言え、実際は非正規労働者は正社員になれず、正社員も管理職や上級事務職になることが困難になっているにも関わらず、です。
しかも、現在の日本では企業の生産性が伸びず、中には倒産する企業も増加してきています。こういった状況のために大多数の者は、昇進によってキャリアアップする機会が閉ざされてきているのです。
このような状況にあって仮に転職をしても、給与増になるどころか、減少するといったことがほとんどです。
この上、年金支給額は年々減らされており、今や国民年金支給額では5.5万円と餓死してしまうほどの金額です。このような状況は今後ますます厳しさを増していきます。
もはや一刻の猶予もない状況にあると言っていいでしょう。
このような中では、もはや国家や企業にまかすことができなくなってきていると言って過言ではありません。
ところが、それにもかかわらず日本人の7割が「起業をしたくない」と考えており、現状を良くしようと言う気持ちに乏しい状況でもあります。もっと多くの人がサラリーマンを辞めて「再起動」し、起業へチャレンジするようになることが必要とも言えます。
勿論、起業は一つの選択肢です。しかし、私たちはこのまま指を加えているわけにはいかないはずです。今や私たち一人ひとりが稼ぐ力をつけていくことが不可欠になってきていると言えるでしょう。
≪対策編≫ なったらどうする? 起業家のメンタル不調
メンタル不調は、果たして自然治癒できるものなのか、自己判断が難しいことがその背景にあります。とりわけ、起業家は自らを追い込むクセが出来ているため、少々の違和感があっても「自分は大丈夫だ」と無理をしがちです。
何より、うつ病は人間関係や仕事からの強いストレスに起因することが多く、適切なケアをしない限りには、うつ病の因子にさらされ続けて悪化をすることになってしまいます。最悪は、苦痛に耐えられずに自殺を選んでしまうこともあるのです。
このようなケースを防ぐには、次の「回復のアプローチ」を理解しておくことが重要です。今回は前回の続きとして≪対策編≫を議論したいと思います。
◆メンタル不調はどうやって起こる?【筆者のケース】
起業家精神は誰でも身につけられるで紹介したように、私は母親の統合失調症を通じて、メンタル不調についてはよく知っているはずでした。
しかし、いざ自分がその立場になると、当事者には想定を遥かに超えた苦痛があることを理解するようになりました。
ある日、父が突然「事業拡張のため」と言って、私に2000万円の連帯保証人を要求したことがきっかけでした。そして目の前が真っ暗になり、誰に救いを求めようにも相談する相手もなく、絶望の日々を感じるようにもなりました。
しかし、私自身のメンタルケアを行う中で、少しずつ回復につながるようになりました。今では、普通の人と何ら変わりなく毎日を過ごせるようにもなっています。
しかも、メンタル不調と付き合っていく中で、改めて心身の健康の重要性に気づくようになっていきました。
それでは、回復に向き合う上で重要な「5つのR」についてご紹介します。
①Rest【休憩】
メンタル不調になったときは、とても辛い「どん底」を経験します。このようなとき、無理に仕事をしてはいけません。まずは手を止めて休み、仕事から離れることが大切です。
辛い時期は、ひたすら脳を休めることが重要です。実はメンタル不調は「心の病」ではなく、「脳の病」だからです。睡眠を十分にとり、のんびりだらだらと過ごしましょう。
②Recreation【遊び】
仕事の手を止めた後は、日常から離れて自分を解放することが大切です。散歩や旅行など気楽になることを行いましょう。女性はヨガなどがおススメです。ゆるい時間を満喫するよう心がけましょう。
③Relaxation【くつろぎ】
Restと併せてリラックスする習慣を作ります。例えば、瞑想やマインドフルネス、階段をゆっくり歩いたり、雑誌を読むなどがおススメです。静かな場所で気楽にできるものを選びましょう。
④Reflection【内省】
①~③は自分を落ち着ける土台のようなものですが、こちらは専門家を必要とします。
自分のメンタルのケアをするには、無意識にはまっている「ネガティブ思考」から脱却することが重要です。
ネガティブ思考からの脱却には「一体、自分に何が起きたのか?」という視点でカウンセラーや精神科医らと一緒に自分の内面に向き合っていくことが大切です。
⑤Rhythm【生活リズム】
メンタル不調が回復してきても、不調になる前と同じ状態になることはできません。仮に回復し、以前と同じパフォーマンスで仕事をしたとすると再発をしてしまいます。その上、体調には波があり、体調が「良い時」と「悪い時」があるのです。
仕事に復帰していくには、この体調の波を自分で管理し、把握しておくことが不可欠です。
もし、ご自分の体調を管理したいならばこのシートを使用してみてください
http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/sokyoku/pdf/suimin_kakusei_rhythm.pdf
◆メンタル不調から回復すると”人生が変わる”
メンタル不調のような「人生の大きなアクシデント」と言えます。
病気がそれまでの世界観、心情、アイデンティティといった価値観を粉々にし、人生に変革を要求するようにもなります。
しかし一方で、大きなアクシデントを乗り越えた人は、それをきっかけに深い癒しが起きたり、新しい世界観に気づいたりして、結果的に劇的な成長することもあります。
ハーバード大学医学部 心理学者マリー・フォーゲアドは「逆境を経験すると信念や人生の優先事項が変わり、創造性が向上するようになる」と述べています。
価値観が破壊されると、信条や思い込みをすてた「ゼロからのスタート」となります。
このため、世界観の再構築をもたらし、「人生への深い感謝」「利他的な行動」「新しい可能性を見出す」といったことへ気づくようになるためです。
実際、メンタル不調から回復し、起業をすることになった人もいます。
キズキグループ代表 安田氏は、働けなくなった人向けの就労支援事業を立ち上げました。彼が起業したのは、「うつ病になってメンタル不調の人の気持ちが分かったから」と述べています。
勿論、メンタル不調にはなるべきではありません。しかし、病気になってしまい「どん底」になっても這い上がっていけば、新しい世界に進むことができるのです。
苦しくてもあきらめてはいけないのは、起業も病気も同じことなのです。
≪生活習慣編≫ なったらどうする? 起業家のメンタル不調
・資金繰りどうしよう…
・あいつを辞めさせなければならない!
・誰にも相談できない…
起業家は常に悩みと格闘しています。
しかし、時にこれらから来るストレスは起業家自身を病ませることもあります。
もちろん、起業家は自己管理を常に行い、メンタル不調への予防をすることが必要です。
しかし一方で、「何が起こるのかわからない」のが起業です。「もしものため」の対策を知っておくことも重要です。
このため今回は、メンタル不調になってしまったときの対処法について議論したいと思います。
◆連続起業家も油断できないメンタル不調
2018年、中国の連続起業家 マオ・カンカンが自殺で亡くなった事は世界中に大きなショックをもたらしました。
彼は、長年うつ病を患っており、それが彼を死に追いやったとみる向きもあります。
しかし、起業家のメンタル不調は珍しいものではありません。
実際、スティーブ・ジョブスの強迫性障害、イーロンマスクの双極性障害など、有名起業家をはじめとする多くの起業家はメンタル不調を患っていると言われています。
その中で最も多いのはうつ病であり、メンタル不調全体の30%も占めています。
起業家は最高のパフォーマンスを維持せよ!「体調管理4つのコツ」で説明しましたが、起業家のメンタル不調は主に「最高責任者という立場」「ねばならない思考」「孤独感」が引き金となっています。
この結果、彼らはつい頑張りすぎ、限界を超える120%以上の追い込みによって、次第に体調を悪化していきます。
◆メンタル不調は生活リズムの乱れによって起こる
仕事への無茶な追い込みなど、強い身体的・精神的ストレスが日常的に起こり、慢性的に続くと自律神経が緊張したままになります。
すると、次第に睡眠、食事などの生活リズムの乱れが起きるようになります。しかも、通常であれば自然と落ち着いていくはずが、中々回復しません。
この結果、不安・だるさ・疲労感が起き、意欲や気力の低下が生じてきます。
実際、メンタル不調を感じている起業家の約30%が「気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じる」と述べるほどです。
その上、起業家自身は停滞し、「社会不適合者」の烙印を押して自分を責めるようになります。
これは、常に好奇心を持って事業を作り上げていくる起業家にとって、脅威となる問題であると言えます。
◆立ち直りを焦ってはならない
メンタル不調のときは、辛い事しかイメージできなくなるものです。このため、動けなくなった自分を責めると余計に悪化します。
例えば、うつ病は自動車で言う「ガソリンが切れた状態」です。
ガソリンが切れると自動車は動きません。
同じようにメンタル不調は「意欲」が枯渇した状態ですので、動くこともできなくなります。
しかし、仕事の手を止めてプレッシャーから解放されると、次第に楽しく働いていたころの記憶がよみがえるようになってきます。
YOUTURN代表取締役 中村氏は自身の双極性障害の経験から、メンタル不調になったときは「働きたい」という気持ちが自然に湧いてきたときに仕事に戻ることが大切と述べています。
動けずに何もできなくなった自分を責めるのではなく、つぼみから花が咲くようにゆっくりと回復を待つことが大事です。
それでは、どのように回復に向き合うべきか、次回≪対策編≫でご紹介します。