変わる経済システム 巨大デジタル市場が社会に変革を起こす ≪第1回≫
欠陥だらけの通貨金融システム
経済学は、通貨には尺度、保存、流通の三機能が必要であるとしています。 古典派経済学と近代経済学のどちらもが、景気後退による不況を防ぐには、国家の金融システムによって通貨の機能を安定化させなければならないとしています。
ところが、2009年に突如として現れた仮想通貨は、通貨の三機能を無視しています。ビットコインの提唱者サトシ・ナカモトは、インターネットの世界では仮想通貨を金融システムから分離させるべきとしました。 このため仮想通貨は、インターネットにおいて主体性を持つことになります。次の記事で彼は消費者が発行し、取引記録のみで成り立つ通貨とすべきとしています。
このことは、インターネットによって世界が一つの経済圏となったためです。実体経済とは別のグローバル化したデジタル経済が現れたためです。
デジタル経済では、時間は最も大きなコストになります。実体の金融システムで国家を仲介することは、企業には大きな負担です。 しかも、実体のグローバル経済では金融システムによる通貨の不安定性が伴います。今日の変動相場制は世界恐慌の反省から生まれ、通貨の安全装置と期待されました。しかし現実には逆のことが起こっています。
2007年には、サブプライムローンによって世界金融危機が起きました。不動産の金融商品として アメリカにおいて低額の貸付がされました。たちまち多くの返済が焦げ付き、株式市場が暴落しました。景気後退が起き、貿易の減少によって世界的な企業の連鎖破綻が起きました。
しかしその一方で、デジタル経済では仮想通貨のビットコインは通貨でなくなりつつあります。それどころか、デジタル経済においては価格が乱高下をする金融商品です。もはや、サトシ・ナカモトの期待を外れて麻薬同然の扱いです。 その上、インターネットの世界では、国家が仮想通貨を規制しても無駄です。富める国で仮想通貨を規制しても、貧しい国の組織、個人が流通させてしまいます。
もはや、インターネットにあるデジタル経済では国家はシンボルです。国家は金融政策によって仮想通貨の流れを変えることができません。
従って、今日のデジタル経済はニーズが通貨金融システムを先行しています。デジタル経済のための組織もなければ、金融危機への予防も対処の手段もありません。
では、私たちはいかにすべきなのか。次回でそれを明らかにしたいと思います。