町おこしの秘訣! 「つながり」でファンを作れ
失敗に終わった「形だけの町おこし」
日本がゼロ成長を続ける中、2015年に始まったローカルアベノミクスにより、地方創生関係交付金がばら撒かれました。このため「形だけ」の町おこしをする自治体が急増しています。
このため、自治体の中では成功したところと失敗したところに分かれました。今では、自治体の経済成長率は、最高と最低の間に2%もの開きがあります。
失敗したところは一時的なイベント活動に終わり、「地域の強み」も「顧客のファン化」も出来ていません。
今日は地域が町おこしにどう取り組んでいくべきか考えたいと思います。
くまモン一人勝ちの「ゆるキャラ」
かつて、「ゆるキャラ」は全国で当たり前のように見られました。
この「ゆるキャラ」は、2004年にみうらじゅんが命名し、10年後にブームとなりました。ところが今では、全国に最大で1700体以上もいたゆるキャラは、半数以下しか活動出来ていません。
しかも、今消費者が覚えているゆるキャラは「くまモン」くらいしかないという有様です。
その上、熊本県のご当地キャラ「くまモン」は、1200億円以上を稼いでいます。2010年の「くまモンを捜せキャンペーン」など、熊本県職員が連帯してSNSでのキャンペーン活動を行ったのが功を結んだためです。
そして今では、熊本県を離れて「人格を持ったキャラクター」として世界に愛されています。
一方で、他の自治体のキャラクター、例えば宮崎県 えびの市の「みなほ」は、SNSでの活動が少なく、町おこしの効果につながっていません。そのせいで市の観光客数は年々下がり続けています。
このため、町おこしの頼みの綱だったゆるキャラは、多くの自治体において、国からの交付金を得るためだけの活動に成り下がりました。つまり、ゆるキャラは鳴り物入りの活動でしかなかったと言えます。
強みを活かして「つながりを作れ」
しかし、ゆるキャラ以外の手段でうまくいっている自治体があります。沖縄県です。実質経済成長率が全国1位であり、しかも8年連続でプラス成長を続けています。
沖縄県は、2011年の東日本大震災から5年で観光客収入が2倍となっています。特にアジアからの観光客の増加が大きく、日本国内のインフラや「おもてなし」によるサービスレベルの高さに魅力を感じて観光に来る人が多く、毎年増加を続けています。
しかし、これでも課題があります。アメリカのハワイと比べると、滞在日数が3日程度と短く、観光対策が今一つといったところです。
小西美術工藝社 代表取締役デービッド・アトキンソン氏によると、観光のポイントは「おもてなしが重要なのではなく、滞在時間を延ばすことだ」と述べています。つまり、今の「おもてなし」サービスに甘んじることなく、町おこしの工夫を続けていく必要があるのです。
引用:おもてなしは観光資源にならない 日本の観光収入を伸ばすためには? | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス
このためには、町の強みを引き出すことが不可欠です。「あなたのためにこういう楽しみを用意しました」という、観光客の立場に立った価値の提供が必要です。
つながりを作るアプローチ「4つのC」
町の強みを引き出しているところとしては、茨城県大洗町があげられます。大洗町では、ガールズ&パンツァーという戦車のアニメで「おもてなし」と「繋がり」で町おこしを行ない、効果を上げています。
大洗町は、「聖地巡礼」としてアニメの舞台となった場所に観光に訪れる「オタク」をターゲットに、おもてなしとしての「体験の場」を作り出しました。
引用(右):<大洗町> ガールズ&パンツァー - アニメと聖地巡礼――深夜アニメはまちを救う? - Cute.Guides at 九州大学 Kyushu University
さらにキャラクターグッズ販売やトークショーを行うことで、大洗町とファン層である「オタク」の繋がりを作り上げています。
この結果、TV放送が終了して5年経過した2018年の今でも観光客が増え続けています。茨城県が全国魅力度6年連続最下位であるのに対し、大洗町は茨城県で最も観光客が訪れている町となっているのです。実際、観光客は東日本大震災時の1.6倍にまで増加しています。
では、どのように繋がりを作ればよいのでしょうか?
そこで私は「4つのC」のアプローチを考案しました。ここでは、大洗町の例から紹介します。
①Context(共通の価値観)
ガールズ&パンツァーでは、主人公たちの学校が「戦車道」の大会で優勝するという話があります。ところが大洗町では、それに合わせて「あたかも地元の高校が優勝したように」見せているのです。
実際、「祝 大洗女子学園 優勝おめでとう」といった横断幕やのぼりが掲げられ、町全体が「祝勝ムード」を醸成しているといった取り組みが行われています。
②Conversation(対話)
大洗町では、地域住民とファンとの間のコミュニケーションが盛んに見られます。こうした交流が生まれることで、ファンはまた大洗町に足を運びたくなります。
例えば、アニメには戦車が突っ込んだ旅館「肴屋本店」があります。この代表者は、町に訪れたファンと交流することで地域の魅力をさらに高めています。
この結果、『ガルパンファン』が『大洗のファン』になり、地元住民も顧客と会話する楽しさを得られるという効果が生まれています。
引用:<大洗町> ガールズ&パンツァー - アニメと聖地巡礼――深夜アニメはまちを救う? - Cute.Guides at 九州大学 Kyushu University
③Contact(接触機会)
心理学で言う、ザイオンスの単純接触効果というものです。人は同じものを何度も接触する機会があると、次第に親近感が増していくという性質があります。これを利用するのです。
大洗町ではアニメに登場する「戦車が衝突した旅館」や「戦車が破壊された場所」といった地点をグーグルマップに記しています。これをファンに配布し、その上さらに登場人物やストーリーに沿った商品やサービスを実際に提供しています。
この結果、ファンは町全体に親近感が湧いていくという相乗効果が出来上がっています。
④Continue(継続)
大洗町は、アニメ放映終了後もイベントを継続開催しています。また、意図的に直前までイベントの情報を非公開にすることで、サプライズ感を演出するなど、飽きられない工夫を行っています。
自ら積極的に取り組むことが不可欠だ
少子高齢化や東日本大震災など、地域にとっては逆風となることが多く存在しています。しかし、「世の中が悪いから」とか「政治が悪いから」と他人のせいにしては何もよくなりません。自らの意思で「自分たちの強みを活かした顧客サービス」を工夫して開発していくことが大切です。
その上で、沖縄県や大洗町など町をあげての取り組みは、今の情勢に対して有用な事例になるのではないでしょうか。
町おこしに取り組んでいる人は、自らの頭で考えて積極的に「つながり」を作り出していかなければなりません。