自分を変えたい!良い未来を作りたい!という人のための経営マインドの強化書

 

【日本復活の鍵】OPECとエネルギー技術を推進すべし

サミュエル・ハンチントンは「文明の衝突」にて、イスラムや西洋の様な事なる文明の衝突の危険性を指摘しましたが、そうなる気配はありません。

しかし、「近隣国家の衝突」は近年よく見られるようになってきました。

 

2018年12月、カタールOPEC脱退の発表があり、世界に衝撃が走りました。このことは、今後のグローバル経済にとって大きな波紋をもたらすことになるでしょう。

日本の私たちはこのことを「対岸の火事」と見ず、協力関係を作っていくことが必要です。そうすることで、日本の閉塞感打破の可能性を見出すこともできます。

今日は、OPECのゆくえと日本のあり方について見てみましょう。

 

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引用:Naseem Zeitoon/ロイター(写真はカタールのアルカービ・エネルギー・産業相)

 

 

国家グループOPECはなぜ誕生したか?

第二次世界大戦後、世界はグループに分裂し、冷戦が起きました。アメリカ中心の民主主義国とソ連中心の共産主義国に別れました。

 

一方で、発展途上国は、独立後もこれらの国から搾取され続けていました。特に中東では、先進国の石油産業の企業連合によって独占され、産油量の利益の大部分を搾取されるという状況でした。

そのため、中東では強大国の企業による資源搾取の対抗としてOPECを組織し、主要なエネルギーである原油の支配権を握ることにしました。

 

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引用:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181204-00010001-storyfulp-m_est.view-003

 

このときからOPECは、強大国に対抗し、域内の産業保護をするという、ECSC(欧州連合EUの前身)と同様の国家グループとしての位置付けを持っていたのです。



時代遅れになったOPEC

OPECは、国民国家の連合グループでありながら、流通量調整で市場に支配権を持つ、「独占的企業連合」としての機能を持っていました。

事実、1973年には、中東に経済制裁を加え、世界に「オイルショック」を与えるという、絶大なる影響力を持っていました。

 

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引用:ガソリン、2年半ぶり高値=平均141.9円・・・。 | 自分なりの株式投資

 

ところが、彼らが絶大なる権力を持っていたが故に、皮肉なことが起こります。

世界は中東以外の油田開発を進めるようになったのです。この結果、OPEC原油生産シェアが低下し、ピーク時の53%から40%になりました。

2018年には、アメリカがサウジアラビアを抜いてトップになり、ロシアが第3位となるなど、原油生産の順位も変わっています。

 

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引用:https://diamond.jp/articles/-/86762

 

その上、原油の消費国も変わりました。他のエネルギー資源の開発を進め、太陽光発電や火力発電など自然エネルギーを利用するようになっていきました。 

そして、OPECが前提としていた強大国とのパワーバランスが崩れました。1991年にソ連が崩壊したことにより、OPECの「抵抗の相手」がいなくなりました。

 

この結果、OPECは世界的な影響力が低下しました。今や需要に対応原油生産量を調整するという、ただの原産地グループでしかありません。



OPEC崩壊の危険

今、OPECは加盟国の結束が崩壊し、サウジアラビアカタール、イランで深刻な対立が生じています。

カタールは1996年にテレビ局アルジャジーラを設立しました。ところが設立間もなくしてアルジャジーラは、アラブの権威主義に反発する報道をします。彼らはアルカイダの声明報道やアラブの春の扇動を行い、変化に乏しい独裁政権を批判するなど、アラブ諸国との対立を煽りました。

 

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引用:Rights groups condemn ‘cowardly censorship’ bid over Al Jazeera | Asia Pacific Report

 

これに対し、サウジアラビアは、カタールとの国境を運河に変え、孤立させる行動に出ました。アルジャジーラの報道は、民衆がサウジアラビア王室の政権を転覆させるほどの影響力があると考えたのでしょう。サウジアラビアカタールに対して感情的な対立をむき出しにしています。

 

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引用:サウジ:断交続くカタールを「島」に 国境に運河計画報道 - 毎日新聞

 

一方、カタールサウジアラビアへの酷い態度に我慢ならなかったのか「OPECの脱退」の決断をくだしました。しかも、カタールサウジアラビアが覇権を巡って対立しているイランと協力関係を持っています。

 

このままでは、OPECが内部から崩壊する可能性も否定できません。中東の国同士で紛争が起きた場合、原油価格の高騰どころか、長期的に原油の入手すら困難になりえます。

 

日本は1980年代から中東への石油依存度を高めており、現在は80%以上もあります。他の原産地である中国やインドネシアが石油輸出を抑えているため、中東への依存度が高い状態にあるのです。

従って中東の対立は、日本にも見過ごすことのできない問題です。

 

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引用:平成24年エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2013)

 

 

エネルギー技術の協力関係が鍵だ

中東諸国対立の背景にあるのは経済の停滞です。IMFによると湾岸アラブ産油国の実質経済成長率は2.4%と世界経済の3.7%を大きく下回りました。

OPECは発足当初から、原油の生産調整しか行ってきませんでした。このため、原油以外の取り組みが進んでいないのが現状です。今日の停滞の原因はここにあります。

 

一方で日本は、1973年のオイルショックからエネルギー技術の開発に取り組んできました。家電製品の省エネは基より、太陽光発電スマートグリッド、電気自動車などの新技術にも積極的に取り組んでいます。しかし、今の協力関係を見ると、家電や運輸の省エネ技術の提供に留まっているのが現状です。これをさらに積極的に推し進めていく必要があります。

 

協力関係の強化は日本にとってもプラスになります。

日本の企業は、他国に先駆けて太陽光発電などの新技術を開発をしたものの、後から中国の企業に抜かれ、商機を見出せなくなっています。こういう中で中東の国と協力し合うことで、日本は新たな市場を作り上げることができるはずです。

 

私たちはOPECの問題を「対岸の火事」と見ずに互いに協力関係を作っていくことが大事です。そうすれば、結果的に自分たちの成長に寄与していくことができるはずです。

 

 

【参考資料】

平成27年度国際エネルギー使用合理化等対策事業 サウジアラビアにおける省エネ制度確立・普及支援事業

http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2016fy/000479.pdf